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青い空と蒼い月

青い空と蒼い月

第1章 出会い 1話

運命 ~destiny~

第1章 出会い

1話 少年、働く場所を探す

東の空が赤みを帯びてきた頃、アルマリードの町の酒場通りには徐々に、仕事帰りの人々が癒しと安らぎの
時間を求めて集まってくるようになってきていた。
メインストリートにある、円形の店構えの店、“ユリギータ”もその例にもれず、開店してすぐに五つしかない
小さな丸いテーブルにはそれぞれに二人か三人の常連客がジョッキを片手に賑やかになっていた。

「いらっしゃい!」

ユリギータの女店主のイザベラは、入り口の呼び鼓がなったとほぼ同時に入り口の方を向いて声をかけた。
入ってきたのは、所々、継ぎ接ぎがある薄汚い茶褐色のマントで体を覆った、背丈は160センチほどの、
お世辞にもこんな時間に、しかもこんな酒場に来るような年齢には、店の店主であるイザベラは見えなかった。

「ここは坊やが来るようなところじゃないよ!さっさと自分のおウチへ帰りな!」

いきなりの言葉にしばらく俯いて、その場で立ちすくんでいた少年だったが、意を決した様子で顔を上げ、
イザベラの傍まで近付いた。

「僕を雇って下さい!皿洗いでも何でもやりますから!」

「なんだって?!あんたをかい?・・・で?あんたは何が出来るんだい?」

イザベラはしばらく、少年を上から下まで見定めたあと、しょうがないと言わんばかりに、この働きたいと
希望するその少年に何が出来るかを尋ねてみた。

「やれ、と言われたら何でもするつもりです!お願いです!この店に僕を雇って下さい!」

「どうしようかねぇ・・・。それより、あんた!歳はいくつなんだい?まだ若そうな歳に見えるけどねぇ・・・。
その歳によっちゃぁ雇うわけにはいかないよ!」

イザベラは、そう言いながら、キッと少年を睨み付けた。
少年は、一瞬たじろいだが、
自分も負けじと女店主を見つめ返した。

「僕の歳は15歳です。」

「あ~!ダメダメ!そんな年端もいかない若輩者をうちは雇わない主義なんでねぇ!それにこの町にゃあ、
18歳未満は雇っちゃいけないっていう法があるのを知らないのかい?!他にあんたを特別に雇ってくれる
店をあたるんだねぇ!」

「そこを何とかお願いします!この通りです!!」

少年はなんとか食い下がろうと、土下座までして必死に女店主に頼み込んだ。

「だめなものはだめさね。あたしゃ、法を破ってまであんたを雇う義務なんざ、さらさらないんだよ!
それに、あたしゃ今まで、曲がりなりにも一生懸命にこの店をやりくりしてきたんだよ。今更、ガキ
一人のために捕まりたくはないんでねぇ。わかったら、さっさと他の店をあたりな。坊や!」

イザベラはそう言って、もう少年には付き合いきれないとばかりに、店の奥の調理場へと入ってしまった。
店の女店主に、キツイ言葉を浴びせられ、愛想を尽かされた少年は、うなだれて店の外へ出ようとした
その時に一人の男に声を掛けられた。

「坊主、職を探しているのかい?」

「え?あ、はい・・・。でも、僕くらいの歳では雇ってくれるところがなかなか見つからなくて・・・。今も断ら
れたばかりです・・・。」

「あぁ。聞いちゃなんねぇとは思ったが、聞こえてきちまったからなぁ・・・。イザベラの声は特別でけぇから、
こんなちいせぇ店の中にいちゃ、何でも筒抜けよ・・・。それよりも、坊主。俺のところに来る気はねぇか?今、
ちょうど人を捜しているところなんだけどよぉ。」

少年に話しかけてきたのは、胸の辺りまで白髪の混ざった顎髭を生やし、白と青のストライプ柄のニット帽
を被った初老の男であった。

「ま、俺にとっても、坊主にとっても、互いに働き手と仕事場を探してるってぇわけだ。悪い話じゃねぇと
思うがなぁ・・・。どうだ?」

少年は、少年とイザベラのやりとりを聞いて話を持ちかけてきたであろう、その初老の男の話を聞いてしば
らく考えていた。
しばらく考えたあとに少年は男の方に向き直った。

「あのう・・・、その仕事というのはどういうことをやるんですか?」

「おお!やってくれるのかい?」

「い、いえ・・・。一応はどんな仕事なのかを聞いておこうと思っただけで・・・、決めるのはそれからで
も良いかと思いまして。」

「それもそうだな・・・。こんなところで話すのもなんだぁ、俺のとこでじっくりと話すとするか?なぁ、坊主。
よっこらせっと・・・。イザベラァ~!勘定、ここに置いておくからなぁ~!また来るぜぇ~!」

初老は、イザベラの返事が返ってくる前に、カウンターにお金を置いて、少年が待っている出入り口へと急
ぎ足で歩きだした。

「それじゃ、俺のあとに付いてきてくれぃ。」

初老は少年にそう言って先に店を出た。少年も初老に付いてあとから店を出た。


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